「穂波様の仕事は私がやります。せっかくお越しいただいたのですから、六条様をご案内差し上げた方がよろしいと思います……!」

 蓮華はぎろりと千代を睨みつけると、余計なことをと小さく呟いた。

 千代がこの後蓮華に嫌がらせを受けないか心配だが、千代は穂波に目配せすると笑顔を浮かべ、大丈夫だと合図を送るのだった。

「では、彼女を少しお借りする。行こう、穂波さん」

 椿はそう言うと穂波の側まで歩み寄り、手をとった。穂波は突然のことに肩を跳ねさせ、身体をこわばらせた。男性に手を握られる機会なんてこれまでの人生、ほとんどなかったからだ。

 特に意味はない、エスコートしようとしてくれているだけだ、冷静になれと穂波は自分に言い聞かせた。

 蓮華の悪魔のような形相を片隅にとらえつつ、何がなんだかわからないまま椿に連れられ……外へ出ることになったのだった。