序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜

 また時は経ち……咲子は、本当に監査役たちから、時隆と八潮の関係に関する記憶を奪い取った。

 屋敷でいつも通り暮らしながら、ゆっくり、じわじわと。目が合った人間の記憶を読んでは消していく。知らぬ間に毒に侵食されるかのように、気づけば記憶を無くしていくのだ。

『もう大丈夫ですよ、時隆さん。安心して、八潮様とお会いください』
『咲子さん……ありがとう。どう、君に礼をしたら良いか』

 初めて言葉を交わしてから一ヶ月も経たぬうちに、咲子はまた時隆の元に訪れ、計画の成功を告げた。

『お礼なんて不要です。二人が、時間を取り戻して、これからまた少しでも一緒に居られるようになれば……笑顔が戻れば、私も嬉しいです』

 本当に咲子は、最後の最後まで何の見返りも求めなかった。それどころか、既に持っているものも捨てようとしていたのだ。

『時隆さん、実は私、今日でこの屋敷を出ていく予定です』
『! なぜだ? 君は八潮様の妾として、何不自由ない生活を手に入れられているはずだ』
『二つ理由があって……一つは八潮様に、時隆さんとの時間をつくってほしいからです。私と娘が居なくなれば、少しでも時間が増えるはずですから』

 そう言って咲子は自分の腹をそっと撫でた。その中に居るのは都姫だろうと穂波は思った。

『もう一つは、この一族の人たちから距離を置きたいからです』

 とっても窮屈なんですよね藤堂家って、と咲子は肩を触りながら、ぐりぐりと振り回してみせた。