序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜

『最初は、相手に触れないとだめだったんですけどね。念力を上手く使いこなせるようになって……実は目が合うだけで記憶を読み取れるし、書き換えられるんです』

 あ、これ内緒ですよと、咲子は口元に人差し指を立てて笑ってみせた。

 時隆は、またも咲子に驚かされた。普通の藤堂家の人間なら、視覚だけで記憶を操れる念力など、すぐに誇示することだろう。しかし彼女は、それを隠して、自分の赴くままに使っているのだ。

『なぜ君は……そこまで俺たちの為に動いてくれるのだろう。褒美や評価では、君の場合はなさそうだ。同情か?』
『同情……に近いのでしょうか? そばに苦しんでいる方が居たら、助けたいと思うこの気持ちは、私にとっては普通のことです』

 この言葉は、穂波もかつて言われた言葉だった。近くに困って居る人が居たら助けることは、息をするのと同じぐらい普通のことだと思いなさいと。損得や、周りの目にどう映るかなど、息をする時は気にしないでしょうと教えられてきた。

 だからあの日も、椿を助けた。

 ……あの日。思い出したくても、うまく思い出せない。

 誰が自分の記憶を奪ったかなんて、最初から気づいていた。

『もう一度、八潮様の隣に時隆さんが居られるようにします。待っててください』
『咲子さん……』

 藤堂咲子。彼女に……母に記憶を奪われた。穂波は過去の世界で久しぶりに咲子の姿を視ながら、静かに確信をした。