序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜

『……』

 周囲の声は聞こえていた。

 念力を人前で使うことが、嫌いだった。

 どんな念力も使えるからこそ自分が何者かわからなくなる。皆が羨ましかった。自分の力だと心から誇れる力が、羨ましかった。

『時隆……ありがとう』

 八潮はゆっくりと手を伸ばすと、時隆の頭を撫でた。八潮は時隆が自身の念力を、誰よりも嫌っていることを知っていた。それでも皆の前で念力を使うと決めてくれた覚悟が、何よりも嬉しかったのだろう。

 嬉しそうに笑みをこぼす時隆を見て、八潮は思わず彼を抱き寄せたのだった。




(きっとこの時、八潮様は、時隆様のことを)

 過去の思念を漂いながら、穂波は、八潮の時隆を見つめる目は、この出来事から変わったのだと感じとった。

 八潮を救おうと、他者の視線を振り払って懸命に尽くす時隆の姿は、穂波から見ても気高くて美しかった。同じ性を持つ八潮から見ても、その美しさは変わらなかったのだろう。

 自分自身も、生まれも立場も年齢も、何もかも違う椿に惹かれ始めている。人を愛す想いの形は様々で、一括りにすることはできないのだろうと穂波は思った。






 時隆が本家の屋敷に来てから二年半経った、年の暮れ。年越しのために少し屋敷が慌ただしくなるこの時期、時隆は十七の誕生日を迎えた。

 誕生日だからって浮き足立つことはない。いつもと変わらない一日としか、時隆はとらえていない。

『時隆、今日の夜、屋敷の門の前に来てもらえないか?』
『承知しました』

 八潮にしては珍しく、時間と場所を指定し、約束を取り付けてきた。いつもなら決め事など何もせず、部屋を訪ねてくるのに。

 本家に来てからの二年半。八潮は時隆の誕生日を二度祝ってくれたが、誕生日といえど、わざわざ呼び出されるのは初めてのことだった。