「俺が視た未来で、穂波さんは時計台下の通りで、血まみれになって倒れていた。そして彼女を、不慮の事故なんて可哀想だと……誰かが笑ったんだ」
「本当に、この祭りの最中に、お前の婚約者は死ぬのか?」

 路夜の問いに、椿は頷いた。

「提灯が並んでいて、太鼓の音も聞こえてきた。だからこの四片祭の中で……穂波さんが殺されると思っていた」

 祭りの前日ではあるが、今日時点でも、椿の視た未来と、時計台下の景色は一致する。今日、穂波が拐われる可能性についてもっと考えるべきだったと椿は後悔した。

「祭りの間は、自転車、動物、車の通行禁止。列車も止まる予定。それで事故死扱いってことは……時計台か、近くの建物から転落したか?」
「あるいは上から落ちてきた何かが、穂波様にぶつかったとも考えられます」

 俺もその可能性は考えたと、椿は二人に同意したが、まだ釈然としない表情を浮かべている。

「わからないのが……ここでわざわざ穂波さんを殺そうとする理由なんだ。祭りでいつもより人通りも多い中、事故に偽装して殺すことに何の意味があるのか」
「穂波様の命を奪う以外の目的が……向こうにはあるのかもしれませんね」