「当主候補者の序列で、時隆様は私を最下位にしておりました。それなのになぜ今、私にそのようなことを言うのですか?」

 ここで怯むわけにはいかない。時隆の真意を探るんだと、穂波は揺さぶられる気持ちを抑えつけた。

 時隆は動揺した様子からすぐに切り替えた穂波を見て少し驚くと、にこりと微笑んだ。新しい玩具を与えられた少年のような、無邪気な笑みだ。

「穂波の名前をもともと書く気はなかったんだ」
「え……」

 予想外の返事に、穂波の顔は強張った。

「次期当主候補に、俺の中で該当したのは九十九人。穂波は、氷宮家にいってしまうと思っていたから除外していたんだ」

 椿が探していた女性が穂波だって、前から本当は知っていたんだよねと、時隆は頷きながら話した。

「けれどね。なんだか穂波の名前を付け足しくなったんだ、百番目に。穂波は藤堂一族に何か起こしてくれるんじゃないかって予感があったから」
「そんな……もともと、あれは何の序列なのですか?」
「あー、あの順番はね」