「敵は三人。全員同じ装束に身を包み、外見の区別が難しいから配置で覚えろ。倉庫内右奥、非戦闘型念力、例の空間転移の奴だ」
「逃げられると厄介ですから、まず叩いた方が良さそうな相手ですね」
「花森の言う通り、まずはこいつから倒すべきだ。他二人は戦闘型。左奥、触れた物に電気を帯びさせる。左手前、筋力を短時間、増強できる。どちらも取るに足らないが、手前の奴から叩くのが常套だ」
「承知しました。殺さず、捕らえる方針でよろしいですか?」
「それで良い。話を聞きたいから殺すのはなしだ」
「かしこまりました」

 平然とした顔で、物騒な話をしていると穂波ははらはらした思いで二人を見る。

 ただ……と椿は顎元に手を置き、眉間に皺を寄せた。
 
「気がかりなのが、すり抜けの念力を持つ男の姿が視えなかったことだ」

 穂波も視た、手で触れた物を透明化させる念力の使い手だ。

「あの……わかったかもしれません」
「え、もしかして視たの?」

 涼葉の問いに穂波は頷いた。椿が扉から未来の思念を読み取る横で、過去の思念を探っていたのだ。

「はい、私も視てみたんですが、どうやら街まで物品の調達に出ているようです。もしかしたら帰ってきて、背後から襲いかかってくる可能性があるのかなと」
「なるほど。倉庫内に居る可能性は低そうだな。ありがとう、穂波さん」

 真正面から椿に礼を言われて、穂波は照れたように縮こまった。その様子を花森が微笑ましそうに見つめる。

「素晴らしいですね、お二人の視たものが合わさることで状況が明確になりました」