依頼人の家を出てから数時間後。花森の案内で、穂波たちは隣町の港に着いた。

 廃刀令が出てから、政府関係者や警察、名家の華族たちしか刀を所有できなくなった現代。丸腰では危険だと、椿に貸してもらった刀を握った依頼人は、不安そうな表情で煉瓦造りの倉庫を見詰めている。

 こんな今から敵の元に突っ込むという状況の中。皮肉にも空は雲一つない快晴で、海は真っ青に澄み渡っている。

「突入時は、いつも通り私が先陣を切る形でよろしいでしょうか?」
「問題ない」

 椿と花森の話す様子を見て、穂波は目を瞬かせた。

「は、花森さんも戦われるのですか?」
「はい。私、椿様の執事兼、用心棒でもありますので」
「花森はそこらの氷宮の人間たちより腕が立つ。心配はない」

 出会ってから一週間、執事の鑑のような人間だと感心していたが……まさか用心棒でもあったとは。しかも念力を使える氷宮家の人間より椿が信頼を置いている。

 こんなに何でもこなせる花森は、ますます何者なのか? 穂波の中で疑問が膨らむ。

「倉庫内の状況特定から始めよう。俺が念力で探ってみる。見張りは頼んだ」

 倉庫は複数あり、同じ形式の、壱から伍までの番号が振られた小型な倉庫が五棟、煉瓦造りの大きな倉庫が三棟ほどあった。