触れた物からその物に関係した人間の思念を読み取る。それが穂波の力だった。

 この国を取り仕切る三大名家……藤堂家、氷宮家(ひみやけ)鷹泉家(たかいずみけ)。名家に数えられる所以は、この一族の人間たちが皆、念力と呼ばれる特別な力を持っているからだ。

 藤堂家の端くれとはいえ、穂波もまた念力を保有していた。最も、穂波の力は一族内で評価されることはない。評価されるのはいつの時代も、戦いに向いている力ばかりだからだ。

「穂波様ー! あの、玄関の前にお客様が……」
「お客様?」

 白洲家の人間が全員出払っているこのタイミングになぜ客がと、穂波は首を傾げた。外部の人間との接触はほぼ遮断され、家での給仕しかしていない穂波宛に、客なんて訪れるはずがないからだ。

 疑問に思いながらも、穂波は駆け足で玄関へと向かった。