「ともかく! 直接本人に近づかないで意識を奪えるものなんて……二択ぐらいしか考えられない」
「二択ですか?」
「ええ。催眠ガスでも炊いたのか、なんらかの念力」

 念力という言葉に、穂波の背筋は思わず凍った。念力を使えるのは、藤堂、氷宮、鷹泉の三大名家のみ。名家の人間が犯罪に加担していることになるのだ。

「催眠ガスにしても、意識がなくなる前触れがなさすぎる気も。思念ではにおいも感じることはできるの?」
「少しは。におい自体を感じるというか……においに対する思いを、読み取るって感覚に近いです」
「なるほど……なんか薬のにおいみたいなのは感じた?」
「いえ、何も感じませんでした」

 涼葉が二択を出し始めた時点で、認めるのは怖いことだが、穂波には後者……念力だろうという予感はあった。

「やっぱ念力の方が可能性としては高いか」
「そんな三大名家の人間が犯罪に関わることなんて、あるのでしょうか」
「たまーにあるよ。既に除籍されてる追放者がほとんどだけどね」