「例えば音は、彼女の意識を奪う為の、なんらかの装置の作動音だった。それが彼女に聞こえようが聞こえまいが、犯人には逃げられずに捕まえる自信があった」
「そうね。私もその意見に賛成だわ」

 念力で視る世界は、自分だけしか視ることのできない世界だと思っていた。けれど涼葉が、一人では考えなかった角度から細かく質問してくれて、穂波は世界が広がっていくのを感じた。

(すごい……)

 素直に心からそんな言葉が湧き出た。

 涼葉の依頼慣れした質問の仕方や態度もそうだが……藤堂一族では誰も、穂波の視る世界に関心も理解も抱かなかった。

 議題は音、たった一つのなのに。こんなにも世界が広がる感覚を、今ここで初めて知れたのだ。

「な、なにじーんとした顔してるの」

 ぎょっとした表情で、涼葉は穂波を見た。感動する気持ちが顔に出てしまってたらしい。

「すみません、涼葉さん、すごいなと思って」
「っ、別にすごくなんかない!」

 涼葉は強い口調で言い返すが、耳がほんのり赤くなっている。悪い気はしていないようだとわかり、穂波は胸を撫で下ろす思いになった。