序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜

 そこで椎菜の記憶はぷつりと消えた。このかんざしに纏う思念の旅は、ここで終わりだ。





「はあ、はあ……っ」
「だ、大丈夫ですか!?」

 心配そうに穂波の肩を揺さぶる依頼人と、怪訝そうな顔で見下ろしてくる涼葉が視界に入った。

 最後に椎菜が誰に、何をされたのかはわからないが、息ができなくなるような。閉塞的な苦しさがあった。

「家に入ってきた何者かに、椎菜さんは誘拐された可能性があります」

 あんな上物のかんざしを、どこかにしまうでもつけるでもなく、化粧台の上に放って置いてる時点で、家で何かあったのかもしれないと思っていた。思念が、違和感の裏づけとなった。

「玄関扉……思念が残ってるかもしれない……っ」

 穂波は駆け足で玄関扉に向かった。犯人が家に入ってきた場所に痕跡があるはずだ。

「……読み取れない」

 しかし玄関扉に触れたものの、流れてくるのはこの家に引っ越してきたばかりの夫婦の記憶だ。犯人に関する思念は残っていない。

 思念は強烈な思い出しか、基本的には残らない。些細な記憶まで読み取ることはできないのだ。

 読み取れないということは、そもそも犯人にとって誘拐は強い記憶ではなかったか、玄関扉が今回の事件と関係していないかのどちらかだ。