「なるほどな。そして天音が都姫を可愛がるのは、全く血が繋がってないわけではないからか」
「左様かと」

 少しずつだが都姫の穂波へ抱く、憎悪の輪郭が見えてきた。

「ご苦労だった。後はもらった資料を読んでおく。で、もう一つの話というのはなんだ?」
「そうでした。涼葉様が先ほどいらっしゃって、穂波様を連れて出て行かれました」
「……………………は?」

 椿の手から、ずるりと書類が滑り落ちる。

「止めようとしたのですが、穂波様がついてかれると言うので。主の命は絶対かと」
「一番の主人は俺だろう!? なぜ止めなかった! ここまで感心して聞いていたのに、くそっ……二人はどこへ何をしに? すぐ追いかける」

 花森は命令に対して基本忠実で頼りになる男だが、時折、彼の判断が混じる。椿にとっては甚だ迷惑で不安しかないが、花森としては子供の世話を焼く親と同じ感覚だった。

「帝都に出られました。勇様から涼葉様に、穂波様と一緒に受けるようにと、仕事の紹介があったようです」