「穂波さんは、触れたものから過去を読み取れる。暮らしているうちに知ってしまった可能性はないか」
「可能性はありますが……父親の件について知っていたら、なぜ都姫が自分たちに対し非道な振る舞いをするようになったのか? もう少し勘づいたはずです」
「……これまでの穂波さんに対する都姫の言動にも、その父親が関係しているのか?」

 三年前。都姫が母親を刺して、一家が離散することになった事件。穂波に対して、自分に関わらないでくれと突然嫌悪するようになった。都姫が変わったきっかけが、ここにあるというのか。

「はい。藤堂都姫の本当の父親は、藤堂天音の父親です。都姫と天音もまた、半分血の繋がった姉妹だったのです」
「!」

 天音の父は、時隆の前の代の当主・藤堂八潮(とうどうやしお)だ。花森たちが調べてきたこの話が本当なら。つまり都姫は、前当主の血を引く正統な、藤堂本家の血筋にあたるのだ。

「本来、本家で受けるはずだった恩恵も寵愛も母親のせいで受けられなかったと。恨んでいるのだと考えてます」