「最近の藤堂都姫ですが、部屋にこもりっきりだそうです。塞ぎ込んでいるわけではなく……藤堂天音が彼女を非難から遠ざけるため、出さないようにしているようなのです」

 藤堂天音。養子入りした都姫の、藤堂家での姉にあたる女性。都姫との見合いの際に少しだけ面識があるが、天音は彼女を溺愛しているように見えた。

「藤堂天音はつい最近、一族の遠縁の人間と入籍したばかりですが……あくまで政略結婚のようです。結婚相手とは最低限しか会っておらず、代わりに一番時間を共にしているのが都姫です」
「なぜそこまで、後から養子入りしてきた妹の面倒を見る」
「都姫の念力の強さに惹かれたのかもしれませんが、もともと自身が兄弟の中で一番、末っ子だったからなのではないかと。でも、他にも理由はあります」

 これについては追ってお話ししますねと、花森は断りを入れてから話を続けた。

「都姫や、穂波様のご両親についてですが……父親は約二十年前。穂波様が生まれてすぐに、事故で他界しておりました」
「! つまり穂波さんと、藤堂都姫の父親は違う人間ということか?」

 二人の年齢は三つほど離れていて、都姫は十八歳だったはずだ。

「そうです。父親の死については詳細が隠されていて、探し回りようやく見つけた情報です。恐らく穂波様自身も知らないのかと」