「戻りました……椿さん? なんだか、不安そうなお顔をされてますね」
「あ、いやこれは、なんでもない」
「? そうですか?」

 さっきまで花森に見せていた態度をおさえ、椿は慌てて笑顔を取り繕った。

「今日はありがとう。俺の家族に会ってくれて。そして、うちに来てくれて」
「それはこちらこそです。氷宮一族の皆さんは優しくてあったかくて……私にはもったいないぐらい」

 あ、部屋も可愛くて、ベッドで眠るのが楽しみですと穂波ははしゃいでみせた。愛らしそうに穂波を眺めながる椿に、花森は機嫌が変わりやすいなと微苦笑した。

「涼葉のことは本当にすまない。あいつはうちへ出禁にする」
「えっ! そんな……謝るようなことじゃないですし、むしろ涼葉さんのおかげで頑張ろうという気持ちが出てきました」

 だから、大切な家族にそんなことしないでくださいと、穂波は笑いかけた。

「穂波さんは昔もそうだったな。俺に自分や家族を大切にしろと言ってくれた」
「えっ、私がですか?」

 いつ椿と出会って、どんな状況でそんなことを言ったのだろう。なぜか思い出すことができないのだ。ずっと考えてはいるのに。