敷地の一番奥にある、二階建ての大きな屋敷を穂波は見上げた。

 赤みがかった金属瓦の屋敷だが、異国の建築様式も混じっているのか、障子がガラス張りになっていた。ところどころ障子ではない窓枠や、見たことのないモダンデザインの手すりも混じっている。

 ガラスが周囲にある木々の新緑や空の青さを映し、屋敷全体が青みを帯びていて綺麗だなと穂波は思った。

「今は俺と、父と祖母の三人が住んでいる。そこに住み込みで花森たちが仕えてくれている」

 こんなにも大きな屋敷なのに、住んでいる人間の数は随分と少ない。人によって家ができるわけではなく、当主に選ばれた人間が住む家であるから当然か。

「椿さん、おかえりなさい」
「祖母様」

 屋敷の玄関扉が開くとそこには使用人に付き添われた、車椅子の女性が居た。