白洲の両親や兄と姉は、藤堂本家の屋敷にこれから赴き、今後の話し合いに参加するのだろう。当主が亡くなった際には一族全員、藤堂の屋敷に集まるのが通例だ。

 だが白洲家に来てからこの三年。一族に関するあらゆる習わしごとに参加させてもらえなかった。今日も千代以外、誰も穂波の部屋に訪れる者は居ない。穂波にこの件を報せる気もないのだ。

「穂波様、自信を持ってください。あなたも一族の一員なのですから!」

 励ましてくれる千代に笑顔を見せつつ、穂波は、こんな一族の一員、やめられるものなら、やめてしまいたいと思った。

 そして穂波の脳裏をよぎるのは、澄人のあの、屈託のない笑顔なのであった。