「ありがとうございます。大切にします。あの……椿さん、良ければつけていただけますか?」
「! もちろんだ」

 椿は少しかがむと、穂波の左手の薬指に指輪をはめたのだった。未来を読み取れる椿でも、側に居ない、これまで見つからなかった穂波との未来は読み取れないでいた。

 ずっと見つからない彼女を探し続け、ようやく自分が描きたいと思っていた未来が、現実になり始めていっている。その実感を噛み締めながら、椿は必ず幸せにしてみせると心に誓ったのだった。

 だがその誓いの裏、椿は穂波の手をとった時。このあと、浮いた話のないあの椿が突然、指輪をつけた女性を連れてきたと。氷宮の屋敷が騒然となる様子を思念で読み取っていた。

 騒がしい事態が起きそうだと思いつつ……穂波を家族に紹介できる喜びの方が上回っていたのだった。