「呆れた。あの女……よく穂波さんの義理の母を名乗れるものだ」
椿は苛立たしそうに、君枝が去った後、閉じていく扉を睨みつけていた。いえいえと穂波は困り笑顔を浮かべながら首を横に振る。
「でも感謝してる面もあります。母親殺しの疑惑がある、面識もない遠縁の親戚を、無償で引き取ってくれたんです」
まあ、時隆の鶴の一声で決まったことなのだが。君枝たちに拒否権など存在しない。
三年前。白洲家と藤堂家に、穂波と都姫を一人ずつ引き取ることになった時。時隆は穂波にどちらの家に行きたいか問いかけた。穂波が選んだのは……白洲家だった。
都姫の念力は、本家の役に立つ。様々なことを学べる環境も整っていて、生活に不自由することもまずない。彼女が幸せになれるのは本家だと信じていた。そんな自分が選んだ白洲家だからこそ、穂波はこれまでの苦難に耐えてこれた部分もあった。
「強いな、穂波さんは……明日の朝、迎えに行く。本当に氷宮の家に来てくれるなら、玄関の前で待っていてくれ」
