「……はい。喜んで」
帝都に訪れたことも一度としてない。どんな世界が広がっているのか? 国の中心都市で念力を使って活躍する、藤堂家以外の名家にはどんな人間たちが居るのか? 穂波は見てみたいと思った。
何もかもが穂波にとって初めての毎日が、始まろうとしていた。
「氷宮椿の話が本当なら、あいつを野放しにしておいて良いのかよ」
「姉の侍女を殺そうとするとか……気が狂ってんだろ」
その一方で穂波と椿が立ち去った後の屋敷では不穏な空気が流れていた。
椿の告発から、都姫の存在を恐れるように彼女を繰り返し見ている者や、小声で相談しあう者は居たが……時隆の秘書は話を当主決めに戻そうと必死になった。
「失礼します。天音様……」
「……そうか。ご苦労」
藤堂天音。藤堂本家における、都姫の義姉にあたる。彼女に言伝があると使用人の男が部屋に入って来た。
「おい、聞け。氷宮椿の言葉は嘘だったぞ」
都姫は不機嫌そうに俯かせていた顔をあげ天音を見た。
「家の者たちに調べさせた。都姫の名を言って自供している連中など居ないそうだ。先ほどの氷宮椿の発言は全て出まかせだ!」
