「じゃ舞香ちゃん、部屋に案内するから来てちょうだいっ」
ミドリさんが笑顔であたしを促す。
「お邪魔しまーすっ」
あたしは傷ひとつないスニーカーを脱いで、ミドリさん家に上がらせてもらった。

「ここが、舞香ちゃんの部屋になりまーすっ」
リビングやトイレなど、いくつか部屋をまわった後、二階の一番奥の部屋に案内してもらった。
「はいっ、ありがとーございますっ!」
「いえいえーっ! 好きに使ってね♪」
「はいっ」
「じゃあ、あたしは一階に戻ってるからね! …あ、ウチの息子達はその辺にいるからまた顔見といてやってね! じゃ!」
そう言ってミドリさんは階段を降りて行った。
…そ、その辺にいるって…??
そういえば、あたしの部屋以外にも、この階にはいくつかドアがある。
この中にいるのかな…?
まぁ、後ででいいか…。入学式の準備もあるし…。
そう思い、自分の部屋のドアノブを握る。

その時、

「おい」

突然後ろから声がした。
「はっ…はいっ!?」
あたしは思わず声が裏返ってしまった。
誰!? そう思いながら後ろを振り向く。