「え~よって、ここが対句で…」
担任の退屈な呪文が耳を通り抜ける。
あたしの頭の中はひとつの事でいっぱいだった。

「高峰ェ!!」

ガタッ!!
「はっハイ!!」
突然名前を呼ばれ、あたしは慌ててイスから立ち上がり、返事をする。
「お前、聞いてなかっただろ!?」
「…き、聞いてましたっ!」
なんて、全然聞いてないけど。
「なら、続きから読んでみろ」
「…はい…」
予想外の展開に、あたしは戸惑う。
話なんて聞いてないよ~!
何ページからなの!?
あたしは慌てて教科書を広げる。
「…………え、と…」
「どうした高峰、どこか分からないんだろ?」
担任が意地悪く微笑む。
出た、この地獄の微笑み。
くっそォ!

パサッ…──
その時、あたしの机に隣からノートの切れ端が落ちてきた。
…隼人?
あたしが隼人の方を見ると、隼人は紙をあけろ、と小さくジェスチャーしていた。
カサッ
あたしは周りにバレばいように、その白い紙をあける。

【資料集の34ページ!】

その紙には少し雑な字でそう書いてあった。
…サンキュー隼人っ!

あたしは隼人に小さくピースサインを送り、素早く資料集を開く。