バタン、ドアが閉まって、廊下には俺と兄貴になった。
兄貴の奴…何考えてんだか…。
俺は少し呆れて、兄貴に背を向け自分の部屋に戻ろうと歩き出す。

「隼人」
背中に、兄貴のいつもと違う声が刺さる。

「んだよ」
特に深く考えずに、俺は後ろを向いたまま返事をする。

「お前、舞香ちゃんの事好きなの?」

兄貴が声色を変えて言う。
は…? こいつ、何言ってんだ?
そんなワケ無いだろ。

「は、何言ってんだよバカ兄貴。そんな事あるわけねーだろ」
思った事をそのまま口に出すと、なぜか心がざわついた。

「そっかー」
少し間を空けて、兄貴の声がした。
いつもと同じ、普通のヘラヘラした兄貴に戻っていた。