「聖七さん、お隣は……」

 凪が、隣の玄関の表札にも『MOGAMI』と書いていることに気づいた。

「ああ、俺の親の持ち物なんだ。て言っても、ここは別宅だから滅多に来ないけどな」

「「……」」

 姉弟は言葉も出ない。最上飲料の社長や御曹司の聖七なら不思議はないのだが、自分達とはあまりにも違う。今更ながらに怖気づく。

 姉弟が呆然としている間に、目の前の扉がこちらもカードを翳して解錠された。

「どうぞ」

 大きく開かれた玄関扉の中は、真っ白な空間が続いている。玄関の中に自分達の住むアパートの部屋がすっぽり入りそうだ。

「マンションに階段が……」

「ああ、最上階だけメゾネットタイプになってるんだ」