「そうと決まれば数日分の荷物を取って来い」

「意味がわかりません」

「簡単じゃないか。俺は夕と結婚したい。そんな女性が住んでいるところがセキュリティを含め心配だ。しかも、母親が入院して費用も掛かるし、お見舞いも必要だ。うちの方が病院に近いし、費用は俺が出す。幸い住んでいるところは部屋が沢山余っているから、凪も退院した母親も住める。どうだ?」

「どうだ?と言われても、どれもこれも可笑しいです」

「どこがだ?」

「「プッ」」

 二人の会話を聞いていた凪と大河が笑いを漏らす。客観的に聞いても、一方的な話だ。ところが聖七は至って真剣な上に、可笑しいとも思っていない。

「専務にお世話になる理由がありません」

「俺は夕の直属の上司になるし、難しく考えなくてもいいんじゃないか?夕は俺のことを好きになるさ。惚れさせてみせる」