「取りあえず、一旦病院を出よう」

 病室で大騒ぎするわけにもいかず、病院を出ることにする。

 大河の運転する車の助手席には、大河にすっかり懐いた凪が座る。必然的に、聖七と夕は後部座席だ。

 車は、香月姉弟の住むアパートに向かっている。車内では、男三人の会話が弾む。凪は、人懐っこく社交的だ。あっという間に聖七のことも聖七さんと呼んでいる。

「凪の仕事は?」

「俺は、酒類の卸会社に勤めてます」

「じゃあうちとも取引があるんじゃないか?」

「はい」

「そうか。どこかで会うかもしれないな」

「聖七さんは、雲の上の人です」

「うちと取引があるのなら知ってるだろう?ダサ専って言われてるの」

「聖七さんのことだったんですか!?」

「ああ」

「ダサイかなぁ??」

 姉弟揃って同じ反応なのが面白くもあり、好感がもてる。