夕の手を握り、少し強引に歩みを進める。専務室を出ると大河が外出の準備をして立っていた。

「エントランスに車をまわしている。病院はどこだ?」

「楠田総合病院だ」

「じゃあ、十五分程で着くな。行こう」

 大河を先頭に、聖七に引っ張られた夕が続く。一階に着くと、人の出入りの多い場所だ。しかも、『ダサ専』が女子社員の手を引いている。状況は分からないが、注目を集めている。

 コソコソと何か噂をしているが、聖七はいつものことだと気にもしていない。何なら、噂が広まってくれた方が好都合だ。

 夕は、母が心配でそれどころではない。

 エントランスにまわされた車を大河が運転し、聖七と夕が後部座席に乗り込む。