「ええっ!?社内で専務を見掛ける?」

「よく見るよ。友ちゃんと一緒にいる時にも見掛けたことあるよ」

「うそ!全く気づかなかった」

「私は、専務はかなりの切れ者だと思うよ。だから、私となんか噂になって申し訳なくて」

 大河は、感心する。聖七の本当の姿を見抜く香月さんにも、人を色眼鏡で見ない香月さんを選ぶ聖七にも……。

 きっと今回の噂の騒動も、香月さんならこちらが動かなくても、上手く切り抜けられるだろう。何かあれば助けるが、変に大河や聖七が出ると話がややこしくなる。

 それよりも、聖七が香月さんを手に入れる方が先だ。香月さん以上に聖七に合う相手はいないと確信する大河だった。

 二人に気づかれないように、給湯室の前から立ち去った。