「俺」

『撮影おわりましたか?』

「ああ。今、本社の前だ」

『えっ?香月さんは?』

「逃げられた」

『……。プハッ』

 最初こそ丁寧に話していた大河も、この面白い事態に口調が同僚に戻る。

「お前、覚えてろよ。それより、目撃者が多数いた」

『そりゃこの時間に本社の前だろ?見られるだろう』

 大河からは呆れた声が返る。聖七も本当は、本社の駐車場に止めるつもりだったのだ。車を止めて、本当に送らなくていいのか確認しようと思った瞬間に逃げられたのだ。

 この後、車を駐車場に止めて専務室に戻ったのだが、大河にはしつこく笑われた。