緊張のCM撮影が終わり解散が告げられた。

 やっと帰れると荷物を持ったところで思わぬ人物から声が掛かった。

「送る」

「えっ?!結構です」

「ブッ。即答か?警戒しなくても、取って食ったりしないぞ。送って行くだけだ」

「いえ。専務に送っていただくなんて出来ません」

「車じゃないと不便なところだろう?」

「行きも来れたので何とかなります」

「女性一人じゃ危ない。上司命令だと思え」

「でも……。遠回りじゃないですか?」

 夕の遠慮する姿にさえ、好感がもてるのだ。何より、そろそろ距離を詰めたい聖七にとっては、今日はまたとないチャンス。最初から、帰りは送るつもりでここまで来ている。