若くて御曹司で専務となると、モテる要素が揃っているのだが、この見た目のせいで誰も寄り付かない。

「社内の点検をしていたんだ。君達、サボってないで部署に戻りなさい」

「……。はい」

 不貞腐れた様子で返事をして、二人はそそくさとその場を去る。

 だが……。

「いつ見てもダサいよね」

「ダサ専にぶつかっちゃった。キモッ」

 小声で話しているつもりかもしれないが、聖七には丸聞こえだ。御曹司になりたくてなった訳ではない。だが、やはり普通の環境よりは、人間の醜い部分を目の当たりにしてきたと思う。

「何で、あんな奴ばかりなんだ?」

 呆れと嫌気でポツリと呟いてしまう。『ダサ専』と言われる素顔を隠す格好は、入社当時から変わらない。自由を得るために始めたのだ。

 学生生活で嫌と言うほど、女性が寄ってきて迷惑した。変装一つで、自由を得ることが出来る。