「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

男性たちは悲鳴を上げ、逃げ惑う。だがそれを無駄な抵抗だと告げるように光線は男性たちの体を引き裂き、命を失った肉体は分厚い雲の中へと消えていく。

辺りにようやく静寂が戻った。追われていた男性が呪文を呟き、姿を見せる。彼はずっと透明になり、姿を隠していたのだ。

「クククッ……。愚かな羊どもよ」

紫の瞳が怪しく揺れる。男性はしばらく笑った後、どこからか一冊の分厚い本を取り出す。表紙には魔法陣が描かれていた。

「フォルトゥナはもう飽きた。異世界を我の手中に収めようぞ」

男性がそう言い呪文を唱えると、本がふわりと宙に浮き、パラパラと勝手にページが捲れていく。ページが開くたびに本は眩しいほどに輝いた。

強い光が消えると、男性がいたのは夜空ではなかった。家やマンションが立ち並ぶ見たことのない景色が広がっている。

「ここが異世界か……」