「モモ? 吐くか?」

 ──トイレにまで連れていかなきゃいけないのかよ~……。

 凪徒はゲンナリしながら再びモモの首と膝の後ろに手を差し込み、

「う……うっ……」

「え? モ、モモ? ちょっと待て! も少し我慢しろ!!」

 慌てて持ち上げた途端──

「う……うっそで~す!」

 ──はぁ……!?

 依然目を閉じたまま、ニコニコ顔のモモが元気良く飛び出させた言葉に、凪徒は一瞬呆然自失した。

 浮かんだ少女の身体から手を引き、数センチだけ落下させてやる。

「お前~! 眠った振りして、俺をおちょくってるのかっ!?」

 が、起きる気配もないので、どうやら寝言だったらしい。

「こいっつ、こうしてやるっっ!」

 凪徒は左手でモモの鼻を摘まみ、右手はまるでガマ口の財布を閉じるように、上下の唇を指で挟んで、モモの呼吸を妨げた。

「ふ……んっ……ん──っ!!」

 さすがのモモもそれを払いのけようと、必死に両手で指にしがみついたので、数秒後には凪徒もモモを解き放してやったが……。