でも質問する前に、翔が顔を真っ直ぐに上げ、今度は動揺していない、フラットに近い声音で言った。

「果歩。きみはそう言うが、俺は事情を知って、なにもしなくていいなんて思えない。責任を取らせてくれ。頼む」

 そしてまた深々と頭を下げるのだった。

 果歩がおろおろしてしまうのも同じだった。

「え……、だって、本当に」

「いや、これは俺がすべきことだ。頼む」

 言いかけたけれど、翔はきっぱり言う。

 果歩は黙るしかなかった。

 この様子では引いてくれなさそうだ。

 でもだからといって、責任なんて、具体的にはなんだろう。

 それが気になって、ひとまずそれを口に出した。

「え、ええと……どういう、形かな……」

 お金をもらうとか、なにか、そういったことなら、あまり受けたくなかった。

 だってそれでは慰謝料のよう。

 果歩は航のことも、あの想い出のことも、そんなふうに扱いたくないのに。

 だが翔が言ったのは違っていた。

「それは……少し考えさせてほしい。この場で決めていいことじゃない気がするし、ちゃんと考えて、適切な方法を提案したいんだ」

 とても誠実な答えだった。

 でもそれはそうだ、翔はつい数分前に、はっきり知ったばかりなのだ。

 それですぐに「じゃあこうしよう」などと決められるものか。

 気持ちも落ち着いていないだろうし、適切な方法というのは、落ち着いた状態で考えて、決めたほうが良いに決まっていた。