「ふぇ……」

 航も突然の揺れに驚いたようだ。

 泣き出しそうな声になる。

「ごめんね、航。大丈夫だよ。ちょっと待ってね……」

 慌てて航を宥め、果歩は前輪を救出しようとしゃがもうとした。

 しかしそこで、腰になにかが、ドンッ、とぶつかってきた。

「きゃ!」

 衝撃に声を上げてしまう。

 そちらを振り向くと、大きな荷物を抱えた男性がいる。

 どうやら果歩が立ち止まってしゃがもうとしたことで、彼の持っていた荷物がぶつかってしまったようだ。

「す、すみません!」

 果歩は慌てて謝った。胸がひやっとする。

 ぶつかってしまった。

 自分がもたもたしていたから……。

「チッ、邪魔なんだよ!」

 小太りの中年男性は顔を歪めて、ぐいっと荷物を引いた。

 だが果歩にぶつけてしまって悪かった、なんて顔はまったく見せない。

 それどころか舌打ちをしてきた。

 果歩の胸がもっと冷えてくる。