「お空にいるみたいだね」

 そう言いながら果歩が航のうしろへ来て、しゃがんで、軽く肩から抱くようにしたときだった。

 ブォン、と音がしそうなほどダイナミックに、飛行機が飛んでくるのが見えた。

 展望台から距離はいくらかあるが、それでも地上から見るより、ずっと近くに見える。

 航はすぐそれに気付き、目を真ん丸に見開いた。

「ひこーき! ひこーきっ!」

 すぐに興奮したように、飛行機、と繰り返す。

 うしろにいる果歩からは、航の顔がはっきり見えないものの、きっととても明るい顔になっただろう。

 航は乗り物が好きなのだ。

 電車も車も好きで、よく乗り物の絵本を読んでとねだってくる。

 その中でも、飛行機は特に好きであるようだ。

 じーっと絵や写真を見つめているし、外を散歩していて飛行機が飛べば、必ず指差して「ひこーき!」と顔を明るくするのだ。

 それが、これほど近くで飛ぶところを見られたのだ。興奮しないわけがない。

「わぁ、飛行機だねぇ。かっこいいね!」

 果歩は一瞬、止まったものの、すぐににこっと笑って航をしっかり抱いた。

 まるで航はなにかを感じ取っているようだ、なんて思ってしまった。