入院していた市立病院で、初産とは思えないと言われるほどスムーズに産まれたその子は、男の子だった。

 男の子。

 翔さんに似た容姿や性格になるかな。

 そうしたらきっと、見た目も心もイケメンになるはず。

 ううん、そうなれるように私たちが育てていくんだ。

 産まれて数日後、ミルクをたくさん飲んで、すやすや眠るその子を抱いて、見つめながら果歩はそんなことを思い、改めて決意を噛み締めた。

 名前は『(わたる)』とつけた。

 翔と同じ、一字の名前だ。

 そしてイメージも翔からもらった。

 空を『(わた)る』という意味を込めたのだ。

 空も、世界も、自由に航れるような、大きな人物になれるように。

 果歩が決めたその名前は、母も、父も、それから報告した友達も、皆、「素敵だね」と言ってくれて、果歩の自信はもっと強くなった。