翔が、ぐっと息を詰めて、ひとつ喉を鳴らした。

 彼の中で決意が固まったからなのか、それとも自制しようとしていたのが切れようとしたからか。

 果歩に知るすべはなかったけれど、きっと後者は確かにあった。

 果歩の頬が再び包まれて、今度は噛みつくように触れられていたのだから。

 慈しむようなさっきのキスとはまるで違っていた。

 求めるような、果歩を食べたいというような、激しいキス。

 何度も繰り返されて、こういうことに慣れない果歩は、必死で受け止める。

 でも頭の中は幸せだった。

 こういうキスこそ欲しかった、と実感して、痺れるような喜びが頭の中と体を満たしてくる。

 やがて翔は果歩を離して、そっと体を抱き上げた。

「ごめん、もう我慢できないよ」

 申し訳なさそうに謝った翔だけど、やはり果歩はその意味を本当にはわからなかった。

 ただ、後半に対して返事をした。

「我慢なんて……しないで……」

 お姫様抱っこをされるなんて初めてだったけれど、腕を伸ばして抱きつく。

 翔をますます煽るようだったその言葉は、その通りになった。

 ベッドルームのひとつで、二人は一晩過ごした。

 とても甘い時間、二人きりの幸せに満ちた時間を過ごした。

 明け方まで続いた時間は、果歩をたっぷり満たしてくれて、また、ひとつのことを確信させた。

 ……このひとのことが好き。

 今、いっときだけじゃない。

 ずっと一緒にいたい……。

 その願いは……、叶うことがなかったのだけど。