高台へ車で向かい、どこまでも広がる海や、ハワイの明るい様子の街を見下ろした。

 賑わっているショッピングエリアへも行った。

 翔おすすめのお店……ただし今度は超高級店ではないところ……に連れられて、素敵な雑貨やちょっとした日用品を見て、買って、お土産も増えてしまった。

 それから美味しいものも色々教えてもらった。

 特に、お土産として持ち帰れそうなチョコレートやフルーツの加工品は、果歩はどれもこれも食べてみたくなってしまったくらいだ。

 そんな楽しいときは、時間にすればほんの数時間だったのに、まるで何年も時間が経ったようにすら感じられたくらいだ。

 それで、今。

 最後に飲み物でも、と、このカフェに入り、トロピカルドリンクで休憩としている次第。

 どこへ行っても楽しかった。

 翔はずっと手を引いていてくれた。

 果歩が見る景色が新鮮だったのは、初めて見るものだという以上に、握ったその手によるものだっただろう。

「……もうあまり時間もないかな」

 隣の翔がそう言い、果歩はどきっとした。

 確かにそうだ。

 もう夕方だから、そろそろ空港へ向かう支度をしないといけない。

 素敵な時間はおしまいに近付いている。

 実感してしまい、ちくっと胸が痛んだ。

 終わりになるのが寂しいと思う。

 本当はこのまま、夢のような時間がずっと続けばいいと思う。

 でもそんなことは、叶わないから。

 素敵なワンピースやアクセサリーで飾ってもらっても、自分はお姫様でもなんでもない。

 日本に帰ればただのOLで、平凡な女の子なのだ。

 だから今日、いっときこの素敵な夢が見られただけで満足。

 そう思って、果歩は笑ってみせた。