「ペディキュアが隠れてしまうのはすまないが、このあとのことを考えて、ね」

 しかし翔は謎のことを言った。

 果歩は首をかしげる。

 なのに翔は手際よく果歩の両足にパンプスを履かせ終わって、そして、すっと手を差し出した。

「さ、立ってみて。ゆっくりね」

 また手を取られることにくすぐったくなりながらも、果歩はその手を取った。

「……はい」

 足に力を込めて、立ち上がる。

 ヒールは十センチくらいありそうだ。

 こんな高いものは、結婚式の参列などでしか履いたことがない。

 転ばないように気を付けないと、と気を引き締めた果歩だった。

 靴を履き、小ぶりのバッグも再び渡された姿をもう一度姿見で見たけれど、やはりそこに映っているのは女優かなにかのような素敵な姿になった自分なのだった。