「ど、どうって……素敵だけど……」

 果歩はもう、おろおろするしかない。

 この様子では、このお店で服を買ってもらえるのだろうけど、どう考えても自分には不釣り合いだ。

 値段も、きっと服のデザインも。

「それなら良かった。じゃあ入ろう」

 果歩の戸惑いはわかっているだろうに、翔は、にこっと笑ってドアに手をかけた。

「Hello.Good afternoon」

 おそるおそる、翔について入ると、店員が丁寧に頭を下げてきた。

 接客もすでに高級店。

 果歩は怖気づきそうな気持ちを覚えた。

「Hi,I’m fine」

 なのに翔は軽く手を上げて、さらりと挨拶する。

 果歩も挨拶したほうが良いだろうと思ったので、慌てて頭を下げる。

「ハ……Hello……」

 この場所で自分もHi、ではカジュアルすぎるかと思ったので、Helloになった。

 店員は気にした様子もなく、ゆったりとした笑顔を向けてくれた。

 そこで別の店員が近付いてきた。

「いらっしゃいませ、逢見様」

 翔はその彼女、きっちりまとめ髪にした黒髪の女性を見て、にこっと笑った。

「こんにちは、今日は彼女の服を選んでほしいんです」

 近寄ってきた彼女は、明らかに日本人である。

 しかも彼女が名前を呼んだのと、日本語になった翔の口ぶりからして、顔見知りかなにかのようだ。