「でも……」

 濁った答えは、またしても翔の笑顔で消されてしまう。

「じゃ、このあと時間があったら、少し付き合ってくれないか?」

 目をぱちくりさせてしまった果歩だったが、問題はない。

 飛行機の時間にもまだたくさん余裕があるのだ。

「え、……あ、うん。時間は大丈夫……」

 受け入れた果歩に、カードでお会計を終えたらしいサムが楽しそうに笑った。

「ショウ、デートネ」

 しかし、どきっとしたのは果歩だった。

 デート!?

 だが言葉にするなら、そういうことになるのだった。

 顔に熱がのぼってくる。体も熱くなってきた気がした。

 しかし照れている場合ではない。

 果歩はバッグの外ポケットから、日本でいうところのポチ袋を取り出した。手のひらに乗るほど小さいもの。

「あの、サムさん。Thank you for your help」

 差し出して英語で言う。

 少しでも誠意を伝えたかった。

 迷惑をかけてしまったお詫び。

 それから、親切にしてもらったお礼。

 両方がこもったチップだ。

 お店などで払うために小分けにしていたものだが、その中でも一番大きな金額が入っているものを取り出した。