メインルームである、テーブルやソファ、大型テレビなどが置いてある部屋に踏み込んだけれど、やはりそこにもひとの気配はない。

 果歩は不審と不安を覚えてきた。

 なんとなく、嫌な予感がしたのだ。

 それは女性の勘といっても良いものだったかもしれない。

 ううん、そんなわけないよ。

 まさか、一夜の……ううん、違うに決まってる。

 自分に言い聞かせるように思い浮かべた。

 でもそう言い聞かせる形になったのは、その思考が正しかったからだと、果歩はすぐに知ることになる。

 テーブルの上になにか乗っていた。

 もしかして、お仕事に行くからメモを残してくれた?

 果歩の気持ちがちょっとだけ上向いた。

 でも近付いてみて、眉根は寄った。

 だって、それは確かにメモだったけれど、その下に封筒が置いてあったのだから。

 メモを見下ろす。

 流れるような字で、あまり多くない文字が書いてあった。

『昨夜はごめん。これで帰りの手配をして』

 それだけ。