それを寂しく思ってしまい、果歩は自分に戸惑った。

 どうしてこんなふうに思うというのか。

 あとから思えば、予感のようなものだったのかもしれない。

 それはともかく、しばらく歩いて、空港出口についた。

 逢見は引いていたキャリーケースをそっと押して、果歩の手に引き渡してきた。

「では、私はここで」

 笑みで言われて、果歩はちょっとおろおろしつつにはなったが、言うべきことを口に出した。

「は、はい! 本当に、なにからなにまでお世話になってしまって、ありがとうございました」

 ぺこっと頭を下げた果歩。

 逢見も笑ったようだった。

 果歩が頭を上げたときには、彼が制帽を取り、胸に当てるところだった。

「とんでもございません。良い旅を」

 そう言って深々とお辞儀をされて、それが最後だった。

 果歩はもう一度、軽く頭を下げて逢見と別れる。

 そのまま出口を出て、外へ向かった。