街の様子や灯かりが特によく見えて綺麗だった。

 見えるのはただの街中で、夜景というほど豪華ではない。

 でもだからこそ身近で、今、ここにはっきりある幸せな時間を感じさせてくれた。

「綺麗だね」

 はぁ、と自分も白い息を吐き出しながら、果歩は感嘆した。

「ああ。俺たちが住んでいるのは……あっちかな?」

 翔も同意して、ちょっと見回して一方を指差した。

 そちらは高い建物が多い。

 自分たちが今、住んでいるようなタワーマンションや、あとはオフィスビルなども多いから。

「多分そうだね」

 果歩もそう返して、ぽつぽつと話をした。

 なんでもない内容だったのに、繋いだ手はあたたかかったし、そんな何気ない話が幸せだった。

 やがて翔の手は果歩の腰に回った。

 そっと引き寄せてくれるので、果歩も自分から身を寄せて、翔にぴったり寄り添った。

 厚いコートの上からではわからないだろうに、翔の体があたたかいことを、果歩は何故かしっかり知ることができた。

 でもそれだけ二人の心が近付いたからだろうな、と寄り添いながら果歩は同じあたたかさが胸に溢れるのを感じてしまう。

「果歩」

 翔が果歩を呼んでくる。

 果歩は翔を見上げて、視線が合った。

 視線の先の翔の瞳は穏やかだった。

 はっきり愛おしいという色で、果歩を見つめてくれる。