だけどそんなふうに言われるものだから、果歩は照れてしまった。

 これほど愛されていると実感してしまったし、そう伝えてくれる翔の言葉も嬉しい。

「あ、……ありがとう……、くすぐったいよ」

 もじもじしてしまった返事に、翔は笑ったようだった。

「だから……、今夜は」

 不意に翔の声音が少し変わった。

 ちょっと低いものになる。

 でも怖い音ではなくて、むしろ果歩の体の奥をぞくっと震わせるような、色気のある声音だ。

 呟いてから、翔はそっと果歩を離した。

 そして今度こそ、肩を優しく押して、どさっとベッドに押し倒してくる。

 果歩は急なことに目を丸くしてしまったけれど、上に乗りかかる体勢の翔の瞳がとても熱くなっているのが見えたから。

 そのせいで、どきどきする気持ちのほうが強くなって、ただ見つめ返すしかなくなった。

「ママじゃなく、俺の恋人でいてほしいんだ」

 今度はベッドの上で果歩の頬を片手で包んで、間近で視線を合わせて、翔は吐息の声で囁いた。

 果歩の胸の鼓動はもう速くなりっぱなしだ。

「……うん」

 なんとかそれだけ返事をした。

 ママじゃない時間。

 今となってはそれは貴重なひとときになってしまった。

 ママの時間だって負担ではないどころか、幸せな時間だけど、翔にこう言われるのはまた違う。

 自分が一人の女性で、翔の妻で、パートナーで、恋人でもある存在なのだと強く実感できて、胸がいっぱいになってくる。