翔の片腕が果歩の腰に回って、ぐっと引き寄せてくる。

 それでもっと密着する形になった。

 ぴったりくっついてキスを交わしていると、今だけはパパとママではなく、夫婦なのだと感じられて、とても幸せだ。

 翔に心から愛されていると感じられるから。

 もう気持ちはすれ違ったり、誤解があったりしないとわかるから。

 あのハワイでの一夜とはもう違う。

 あのときだって幸せだったけれど、あのときのようにすれ違って、別れになってしまうことにはもうならない。

「果歩……、このまま……いいかな」

 長いキスのあと、翔は果歩を間近で見つめて小さく言った。

 まるで囁くような吐息がくちびるにかかって、果歩の体をぞくりと心地良く震わせた。

「……うん」

 意味なんてわかっていたから、果歩はそのまま返事をした。

 翔はやわらかな視線になって笑みを返して、それで果歩の体を抱き上げた。

 お姫様抱っこにされて、果歩は翔の首元に腕を回して、自分からもくっつく。

 音を立てないように静かに向かったのは、別室。

 そこにもベッドがある。

 翔が元々使っていた、セミダブルの小さめのベッド。

 今は毎晩、メインの寝室で航も一緒に川の字で寝られる形で寝ているから、ここを使うことはあまりない。

 そう、今のように、夫婦の時間を過ごしたいときくらいしか。