だって翔はいつもこうして帰ってきてくれる。

 それに仕事に行っているときだって、果歩や航のことを考えていてくれる。

 毎回買ってきてくれるお土産や、フライト先でのお土産話がそのあかしだ。

「そうか。ちょっと残念なところもあるな」

 果歩の言葉に安堵したようで、翔はちょっとふざけることすら言った。

 果歩は思わず、くすっと笑ってしまう。

「もう、翔さんったら」

 でもこういうことがやり取りできるようになったのは、関係にもっと強い信頼ができて、心が近付いたからだ。

 それを実感できるのが、また幸せだと思う。

「果歩」

 もう一度、翔が名前を呼んできた。

 腕が動いて、果歩の頬に大きな手が触れてくる。

 果歩はすぐにわかって、翔のほうを振り向いた。

 そうしたことで翔に両手で頬を包まれる形になって、見つめられた。

「……翔さん」

 果歩の声はうっとりした。

 こうして触れ合って、名前を呼ばれれば実感してしまう。

 寂しくなくはないと言ったけれど、寂しかった気持ちは確かにあるのだと。

 手を伸ばして翔のセーターをきゅっと握れば、翔の顔が寄せられた。

 くちびるが触れ合う。

 ソフトに、何度もつつくように触れられて、果歩の胸がどきどきするのはどんどん強くなっていった。