翔が息を呑むのが伝わってきた。

 でもすぐに言葉にしてくれる。

「ありがとう」

 そのあと、不意に席を立った。

 わかっていた果歩は自分も立ち上がる。

 すぐにテーブルを回り込んで、こちらへやってきた翔が果歩を腕に抱き込んだ。

 二年半ぶりだった。

 しっかりした、あたたかな体。

 抱きしめられて、果歩は胸の騒ぎと安心を同時に覚える。

 本当に、ここまで来られて良かった。

 触れ合った体と、しっかり包んでくれる優しい腕は、果歩にそう思わせてくれる。

「果歩……、ありがとう。本当に」

 ぎゅっと果歩を抱きしめて、翔は震えそうな声で名前を呼んできた。

 果歩は穏やかな気持ちで返す。

「私こそ……」

 腕を持ち上げ、そっと翔の背中に回した。

 こんなに幸せな気持ちになれるなんて、と感じ入ってしまう。

「果歩、少しいいかな」

 しばらく抱き合っていたけれど、不意に翔が少し力を緩めて、果歩の顔を見てきた。

「うん?」

 果歩は不意に違う話題になりそうなことを感じて、首をかしげる。

 その果歩に笑いかけて、翔は果歩を、すっと離した。

「車に残してきたものがあるんだけど、取ってきていいか?」

 不思議なことを言ってくる翔。

 果歩はますますわからなくなった。

「え? あ……うん。どうぞ?」

 それでも頷いた。

 翔はそれで、「少し待っていてくれ」と言って出ていった。

 果歩は不思議に思いながらも、玄関で立って待つ。